店舗保険の比較
生産物賠償責任保険と施設賠償責任保険の違いとは
損害賠償責任
2019.04.10
店舗を経営していると、お客様とのトラブルは避けられないものです。しかし、適切な店舗保険に加入しておけば、ほとんどのリスクをカバーすることができます。様々な損害をカバーする賠償保険として「生産物賠償責任保険」と「施設賠償責任保険」の2種類があります。どちらも予期せぬアクシデントが起こったときに補償してくれる保険です。しかし、それぞれ補償の範囲が異なるので注意が必要です。ここでは、生産物賠償責任保険と施設賠償責任保険の違いについて解説していきます。
生産物賠償責任保険
生産物賠償責任保険とは、通称PL保険とよばれるものです。企業が製造もしくは販売した製品、また行った仕事の結果に起因して、他人へ身体の障害または財物を滅失・破損・汚損したりした場合、PL法(product liability law:製造物責任法)の規定に基づき、損害賠償責任を負わなければなりません。
昨今では対人・対物事故ともに高額の請求が発生するケースもふえており、自費だけで支払うのは非常に困難です。
企業イメージを損なうだけでなく、多額の損失を被ることによって、倒産に追い込まれるケースも少なくありません。
生産物賠償責任保険に加入していれば、損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、保険金が支払われます。「生産物」の名を冠していますが、製造業だけでなく、飲食店や販売店、工事や作業の請負業者など幅広い業種が対象となっているのが特徴です。
補償の内容は保険会社によって異なりますが、基本的には以下の損害に対して保険金が支払われます。
1.損害賠償金
治療費や修理費など、被害者から損害賠償金として請求された費用です。
2.損害防止費用
事故が発生した際、損害の拡大を防ぐための費用です。例えば、火災時に消火活動にかかった費用などが挙げられます。
3.争訟費用
被害者から損害賠償責任を求める裁判を起こされた場合の訴訟費用や弁護士費用、調停・示談金などが含まれます。
4.権利保全行使費用
損害賠償を請求されたときに、他にも責任を負うべき対象者がいれば、その方に対して賠償費用を請求できる権利があります。権利保全行使費用とは、その手続きにかかる費用のことです。
・事故発生時の応急手当等の緊急措置費用
突発的な事故による応急手当や護送などの緊急措置にかかった費用です。
5.協力費用
事故を解決するために、被保険者が保険会社へ協力するためにかかった費用です。
6.緊急措置費用
事故が発生した場合の緊急措置に要した費用です。被害者に対する応急措置や護送などが該当します。
施設賠償責任保険
自身が所有、使用もしくは管理する施設に欠陥や不備があり、他人に怪我を負わせたり、他人の所有物を壊したりした場合、支払うべき損害賠償額を補償してくれる保険です。また、施設における業務遂行上の対人・対物事故も補償の対象となります。
この場合の「施設」には、飲食店や美容院、洋品店、工場、倉庫、事務所など、様々な形態の事業所や作業場が含まれます。業態を問わず、不特定多数の人が出入りする施設を運営・管理する場合は、トラブルが生じたときに備えて入っておきたいものです。
施設賠償責任保険の補償範囲は広く、被害者に支払う損害賠償金はもちろんのこと、事故発生時の応急手当などの費用、さらなる被害を防ぐための費用、裁判などにかかった費用などもカバーできます。また、補償が大きい割に保険料が安いのもメリットのひとつです。たとえ1億円の補償額を設定しても、千円から数千円というリーズナブルな金額で加入できます。
なお、施設賠償責任保険は、あくまでも第三者に対する補償を想定しているため、自社の従業員の怪我などは補償の対象外です。また「賠償責任保険」とめいうってあるとおり、法律上の賠償責任を負うことが前提となっています。台風や地震などの自然災害による事故の場合は保険金支払いの対象とならないので注意しましょう。
生産物賠償責任保険と施設賠償責任保険の違いとは?
生産物賠償責任保険と施設賠償責任保険は、どちらも法律上で損害賠償責任が発生した際に被る損害に対して補償する保険です。被保険者の不注意で第三者に損害を与えた場合に、保険金支払いの対象となります。最近では、訴訟を起こされて、高額な損害賠償命令が出されるケースも少なくありません。こうした状況を考えると、必要不可欠な保険といえるでしょう。
同じ対人・対物事故であっても、原因によって生産物賠償責任保険が適用されるものと、施設賠償責任保険が適用されるものに分かれます。例えば建物の外壁が落下して通行人に怪我を負わせたとします。施設の管理のしかたが悪いとされ、施設管理者が賠償責任を負った場合は、施設賠償責任保険の補償範囲です。しかし、外壁塗装工事のミスに起因するものであれば、工事業者が責任を負うことになり、生産物賠償責任保険の補償範囲となります。
また、それぞれの保険が対象となる事故例を以下にご紹介します。両者にどのような違いがあるかを把握した上で、必要な補償をカバーしてくれる保険を選択することが大切です。
- 生産物賠償責任保険の対象となる事故例
・レストランで提供した食事が原因で、集団食中毒が発生した。
・電気工事の配線ミスによって漏電し、火災が発生して建物が焼失した。
・販売したオーブントースターの欠陥が原因で出火し、購入者の家屋を全焼させた。
・防水工事をしたあとに、雨水が漏れて内装設備を汚損させた。
・エステサロンで販売した美容器具に不具合があり、お客様に怪我を負わせた。 - 施設賠償責任保険の対象となる事故例
・店の看板の留め金が腐食していたため、看板が落下して、通行人に怪我を負わせた。
・飲食店のアルバイト店員が配膳中にコーヒーをこぼし、お客様の洋服を汚した。
・美容院の排水管が詰まったことから、階下の店舗に浸水・汚損した。
・自転車で出前中に歩行者とぶつかって怪我を負わせた。
・ビルで火災が発生し、避難通路の不備によってお客様が逃げ遅れて死傷者が出た。
飲食店を開業するならどちらの保険に加入すべき?
結論からいうと、生産物賠償責任保険と施設賠償責任保険の両方の保険に加入しておくことをおすすめします。
飲食店を開業する上で大きな脅威となるのが、食中毒です。厚生労働省の統計によると、平成29年には1,014件の食中毒が発生しており、そのうち6割近くを飲食店が占めています。いくら気をつけたとしても、食中毒が起こる可能性はゼロではありません。万が一食中毒が起きてしまった場合、多額の賠償金を請求されることがあります。そうしたリスクへの備えとして、生産物賠償責任保険に加入しておけば安心です。
しかし、飲食店にとって必要な補償は、それだけで全てを賄えるわけではなりません。飲食店において、配膳中お客様に料理や飲み物をこぼしてお客様に火傷を負わせたり、衣服を汚してしまったりするトラブルは常に起こりうるものです。このような場合に備えて、施設賠償責任保険にも加入しておきたいところです。
2種類の賠償保険に加入することによって、幅広い損害に対応できるようになり、安心して事業に専念することができるでしょう。
まずは店舗保険内容の確認を
飲食店や小売店舗を経営する上で、火災や災害などによる建物や什器の破損、お客様トラブルによる賠償責任など様々なリスクがあります。そうしたリスクが現実化したときのダメージは計り知れません。もしものときに備えて、必要な補償がついた保険に加入しておくことが求められます。
生産物賠償責任保険や施設賠償責任保険は、単独で契約するよりもセットプランで加入したほうがトータルでの保険料が安くなることがあります。また、事故が起こった際には保険会社に連絡しなければなりませんが、1社のみと契約しておけば連絡先も1カ所で済むので便利です。まずは、現在の店舗保険の内容を確認して、必要な補償をつけることをおすすめします。
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