あなたの言動は大丈夫?職場での妊婦さんへの接し方
トラブル・リスク
2022/1/5
妊娠を上司に報告したとたん、これまでの仕事の実績や会社への貢献、勤務態度とは関係なく、「降格させられた」、「退職を勧められた」など、マタニティハラスメントによる被害が近年増えつつあります。それにともない、被害者が会社を訴えるケースもあり、職場でトラブルが起きないよう、また、起きてしまったときのために、事前の対策が必要です。何をしておけばよいのかについて、お伝えします。
マタハラ被害状況について
2019年1月の法改正により、事業主は妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて、防止措置を講じることが義務付けされました。しかし被害状況が減ることはなく、出産を望む働く女性の精神的大きな負担になっています。ここでは、マタニティハラスメントの概念と、被害状況や実例をお伝えします。
(1)マタニティハラスメントとは
厚生労働省によると、マタニティハラスメントとは、上司または同僚から行われる下記のようなことが該当します。事業主はこのようなマタニティハラスメントが起きないように注意することはもちろん、発生してしまった場合は速やかに対応しなければいけません。
- マタニティハラスメントに該当するもの
- 1.解雇その他不利益な取り扱いを示唆するもの
- 産前休業の取得を上司に報告したところ、「休むなら辞めてもらう」など解雇を示唆されること等
- 2.制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの
- 通勤の負担緩和のため時差出勤を申し出たところ、同僚から「自分なら時間通りに出勤する。あなたもそうすべき。」と繰り返し言われ、制度の利用を諦めざるを得ない状況となっている等
- 3.妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの
- 妊娠したことを同僚に伝えたら、「自分なら今の時期に妊娠しない。あなたも妊娠すべきでなかった。」と繰り返し言われ、就業するうえで看過できない程度の支障が生じていること等
(2)被害状況
令和2年度に「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」で受けた相談(130,396件)のうち、男女雇用機会均等法に関する相談件数は25,109件(19.3%)。そのうち、マタニティハラスメントに該当すると思われる相談は16,000件(63.7%)にもなり、前年の9,730件(49.6%)を大きく上回りました。内訳としては、「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」が5,021件(20.0%)、「妊娠・出産等に関するハラスメント」が2,041件(8.1%)、「母性健康管理」が8,938件(35.6%)です。
働く女性が増えつつある今、事業主や上司は自分の会社でもマタニティハラスメントがあるかもしれないことを理解し、被害防止に取り組む必要があります。
(3)マタニティハラスメントの実例
母子の健康を考えると、妊娠したら勤務内容や時間に配慮が必要になり、妊娠前のような働き方ができなくなることがほとんどです。しかし、それを理由に妊婦への嫌がらせが起きており、妊娠したことを職場の人に喜んでもらえず、悔しい思いをしている妊婦がいるのが現実です。過去にどんなマタニティハラスメントがあったか事例をご案内します。
- 実際にあったマタニティハラスメント
- 1.つわりがひどいので業務の負担軽減を会社に申し出たら反対され、その半月後に役職手当などの削除を通達され、降格させられた。
- 2. 人手不足の時期に妊娠し、上司に報告すると「計画性がない」と怒られた。
- 3.試用期間中に妊娠がわかり、会社に報告したところ、2週間後に勤務態度が悪いという理由で解雇通知をうけ、強引に解雇通知書にサインをさせられた。
この言動もマタハラに
これまで、マタニティハラスメントの被害についてお伝えしましたが、妊婦への軽率な言動や行為もマタニティハラスメントに該当することがあるため、上司や同僚もどんなことがそれに値するのかを知っておく必要があります。
(1)心無いひとことで加害者に
たとえ悪気がなかったとしても、あなたが発した言葉により本人が傷ついてしまえば、マタニティハラスメントになってしまいます。また、妊娠期間のことだけではなく、産後休暇や復帰後の働き方に関して発した言葉も対象です。
例えば、「産休や育休中は、働かなくても給与がもらえてうらやましい」などの発言も、職場の人が出産や育児への理解がないことを知り、本人を不安にさせてしまいます。相手の身になって考え、軽い気持ちでの言動は慎まなければいけません。
(2)男性へはパタニティハラスメント
妊娠や出産に対するハラスメントは、女性に限ったことではありません。妊婦や子育て中の配偶者等をサポートする男性に対して、育児休暇を認めなかったり、復帰後に降格させるなどの行為はパタニティハラスメントと言い、立派なハラスメントになります。「男性なのに○○」という言動はもってのほかです。
(3)配慮のない対応
妊娠期間中は体への負担が非常に大きく、普段の生活もままなりません。よって、長時間の立ち仕事や重労働をさせないなど業務上の配慮はもちろん、近くでタバコを吸わないなど業務外でも配慮が必要です。健康に被害を及ぼす配慮に欠ける行為は、大人として常識をうたがいます。社内でこのようなことが起こらないよう、雇用主は従業員への周知を徹底しておかなければいけません。
賠償金・慰謝料
マタニティハラスメントの被害に遭った従業員が、会社や上司に賠償責任を請求することがあるため、会社としてはその支払いに備えておく必要があります。ここでは賠償金・慰謝料の支払い例や対策方法をお伝えします。
(1)賠償金・慰謝料が生じる例
支払いが生じる例をご紹介します。
- 1.副主任である女性が妊娠を理由に降格させられ、会社に対して無効とする訴訟を起こしたところ、慰謝料の支払いが命じられた。
- 2.本人の同意がないまま、妊娠中に不当に退職させられた被害者が、会社を相手に賠償責任を請求し、未払い賃金を含めた支払いが命じられた。
- 3.幼稚園教諭である女性が、園長に妊娠を告げたところ、代替教諭を探すのが困難なことを理由に退職させられた。女性が幼稚園に賠償責任を請求したところ、女性の復職と慰謝料の支払いが幼稚園に命じられた。
(2)保険で備えて対策
裁判になった場合、賠償金や慰謝料以外にも弁護士費用など、様々な費用がかかります。また、費用の面だけではなく、お詫び文書の作成など手続きの面でも不安が多いです。それらに備えるには、保険に加入しておくと、費用の面で安心でき、手続きのことで相談に乗ってもらうなどのサービスを受けることができます。
マタニティハラスメントにより裁判になると、企業としてはイメージダウンにつながります。まずは社内でマタニティハラスメントが起こらないのが1番ですが、起こってしまった場合は早期解決に向けて話し合うことが大切です。ただ、話し合っても折り合いがつかず、被害者から賠償責任を請求されることもあります。そのような場合に備えて、保険に加入しておけば、賠償金や慰謝料を始め、弁護士費用や各種費用保険金を補償してもらえて安心です。
妊娠・出産・育児へのハラスメント防止措置の徹底により、マタニティハラスメントの心配が全くない職場であることが望ましいですが、どんな職場でもふとした言動により妊婦を傷つけ、裁判にまで発展する可能性があります。万一のために保険で備えておくことは必要です。
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