店舗保険で守れないこともある!
補償の範囲を知っておこう
業種別保険
2019.02.08
店舗保険は、店舗経営におけるさまざまなリスクをカバーしてくれる心強い味方です。しかし、全ての事故や賠償責任をカバーできるわけではありません。すでに加入している、もしくは加入を検討している店舗保険の補償範囲をあらかじめ知っておき、万が一のリスクに備えましょう。
店舗保険とは
店舗経営に伴うリスクは、火災や地震などの天災による損害から、お客さまとのトラブルによる賠償責任の発生まで多岐に渡ります。
これらの損害に対する補償がセットになっている店舗経営者向けの保険として、店舗総合保険があります。
店舗総合保険では、以下のような損害が補償対象となります。
- 火災、落雷、風災・雹災・雪災・水災
- 破裂・爆発
- 給排水設備の事故等による水漏れ
- 盗難による損失・汚損
- 建物外部からの衝突・飛来
- 騒擾・労働争議による暴力行為・破壊行為
- 休業損失
しかし、店舗総合保険に入ってさえいれば安心というわけではありません。店舗総合保険の補償対象外となるトラブルが起きてしまうケースもあります。
特約などでカバーできるリスク
保険内容が想定されるリスクをカバーしきれていない場合は、特約などを付けてそのリスクに備えます。保険会社によっては下記のような補償がついている場合や、いわゆる特約という形でオプション契約する場合もあります。
- 施設の使用または管理に起因する偶然の事故によって生じた怪我や財物の損壊に対する損害賠償責任に対する補償
- 店舗や事務所を借りている人が、火災などに起因して借用戸室を損壊してしまった際に、貸主に対する損害賠償責任に対する補償
- 臨時費用
- 修理費用
- 残存物取り片付け費用
- 失火見舞い費用
さらに、それぞれの業務内容に特有のリスクもあります。
Case1飲食店
飲食店で大きなリスクとなりうるトラブルは食中毒です。食材の管理や調理体制を徹底していても食中毒を出してしまうリスクをなくすことはできません。万が一食中毒が出てしまうと、さまざまな損害が生じます。例えば、営業停止処分による休業損害、料理を提供したお客さまに対する賠償責任などです。営業停止や賠償金の支払いなどは、食中毒が発生した場合は迅速な対処が求められます。一歩間違えれば死に至るリスクもはらんでいるためです。見舞保険金などの形で素早く保険金を手にできるような補償もあります。食中毒に対する手厚い保険への加入が勧められます。
Case2理美容・サロン業
理美容・サロン業も飲食店同様に業種ならではのリスクがあります。
例えば、理美容院の場合はヘアカット中にハサミでお客さまを傷つけてしまう可能性が、ネイルサロンの場合は爪や指を傷つけてしまうリスクがあります。お客さまにケガをさせてしまうリスクと隣り合わせであるため、お客さまに対する賠償責任が生じる可能性が高くなります。他にも、受付で預かっていたバッグを誤って汚してしまったり、会話の中でお客さまを深く傷つけるような発言をしてしまうなどの人格権侵害のリスクもあります。お客さま自身を綺麗にすることが目的である理美容・サロン業ならではのトラブルを想定しなくてはなりません。
地震保険は別途加入が必須
すべての保険会社において、別途加入が必要になるのが地震保険です。
地震や津波、噴火によって生じた損害の場合、どの店舗総合保険においても補償対象外になります。地震をはじめとする予期せぬ自然災害に対するリスクに備えるためには、地震保険に別途加入が必要となります。
店舗総合保険の補償内容や保険料はさまざまです。業種によって想定されるリスクも大きく異なるため、事前におこりうるトラブルについて考えておく必要があります。
保険会社問わず補償対象外となるケース
プランや特約の見直しではカバーできない損害もあるため、注意が必要です。
店舗保険の基本は、突発的に発生した事故や災害による損害を補償することです。そのため、保険契約者の故意や予期しうる損害に対して対策を怠っていた場合などは、支払いの対象外になります。
具体的に、下記のようなケースは補償を受けることができません。
【設備・什器等保険】
- 保険契約者、被保険者、もしくは保険金を受け取るべき方の故意もしくは重大な過失等による損害
- 保険の対象が屋外にある間に生じた盗難による損害
- 核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染されたものの放射性などの有害な特性による損害
- 保険の対象の欠陥による損害
- 電気的・機械的事故(故障)によって生じた損害
- 保険の対象の自然の消耗、劣化、性質による変色、さび、カビ、ひび割れ、ねずみ食い、虫食い等によってその部分に生じた損害
- 擦り傷、かき傷、塗料の剥がれ等の、外見上の損傷または汚損(保険の対象の機能に支障をきたさない損害)
- 詐欺または横領によって生じた損害
【賠償責任保険】
- 被保険者の心神喪失または指図によって生じた損害
- 保険契約者、被保険者またはこれらの代理人の故意によって生じた損害
- 借用施設の改築、増築、取り壊し等の工事によって生じた損害
これらのリスクは、避けられないものもあります。しかし、普段からの対策や心がけで回避できるものもあります。
例えば、保険の対象となる什器などを屋外に出したままにしない、機器の故障や不具合が生じないような管理体制を整える、借用施設の改築や増築などを行う際には保険会社にその旨を事前通知して保険内容変更を申し出る、などです。このように、意識や心がけ一つで未然に防ぐことができるリスクも数多く存在するのです。
保険契約は早めに対応!
店舗保険は、早めに契約をしておくことが大切です。その理由は、保険料領収前に生じた損害に対しては保険金が支払われないためです。保険加入前に生じた損害に対する補償を求める行為は詐欺に当たります。
なお、更新の際に支払いが遅れて滞納してしまうと、滞納中に万が一のことがあった場合に補償を受け取ることができません。通常、支払いには猶予期間があり、支払い催促の通知が届きます。うっかり忘れていた場合には速やかに支払いを済ませましょう。
補償の範囲を知って店舗保険を正しく活用するためには
店舗保険は万一の時に安心な保険ですが、ご紹介したようにどんな損害でもカバーできるわけではありません。事故が起こった際に保険を申請しても、補償の対象外で保険金の支払いを受けられないケースも多くあります。
業務内容上リスクが高いと考えられる損害には、その業種に特化した特約などにセットで加入することがおすすめです。思わぬ事故の際の支払いリスクをカバーすることができます。店舗保険に加入する際には、想定されるリスクに対しての補償内容をしっかりと確認して、納得した上で加入するようにしましょう。
また、特約などでもカバーしきれない損害に対しては、損害ができるだけ生じにくい環境を普段から整えるように心がけることが重要です。
日常的に設備や借用施設を点検し、重大な過失の起こりにくい職場環境づくりをしましょう。保険申請において重要な点は、いつ、何が原因で、どういった損害が生じたのかを明確にすることです。
普段から設備や什器、施設の状況をしっかりと把握しておくことで、万が一の事態が生じた場合にも、その損害が補償対象にあたるかどうかスムーズに判定することができます。
日々の仕事に追われる中、設備や機器の点検や修繕、職場環境の見直しなどはついつい後回しになってしまいがちです。しかし、店舗保険の対象外となるような事故をできる限り防げるように、日常的な点検や管理体制の強化を行うようにしましょう。
店舗保険のお役立ち情報
保険料シミュレーション
業種別にさまざまなプランの保険料をシミュレーションすることができます。