食中毒のリスク対策。今すぐにできる2つの方法
HACCP
2021.07.30
飲食店をはじめ、食品に携わる事業者は、食中毒を発生させないよう、常に衛生管理を意識し、従業員にも徹底させなければいけません。しかし、どんなに細心の注意を払っていても食中毒を発生させてしまうリスクはあります。ではどのように備えておけばいいのか、今すぐにできる対策をご案内します。
飲食店の食中毒のリスク
飲食店で食中毒が発生した場合、お客様への対応や営業停止などのダメージはとても大きく、店の存続にも関わります。ここでは、食中毒発生件数のうち飲食店が占める割合や、裁判になった場合の賠償等について見ていきます。
(1)食中毒の発生件数
2020年の日本国内における食中毒発生件数は、厚生労働省の統計によると全国で887件。患者数は14,613名。そのうち3名が亡くなられています。発生の原因はウイルスが約25%、細菌が約65%で、発生場所は飲食店が約42%と1番多く、2番目が家庭で約19%でした。
食中毒の発生は、飲食店が半分近くを占めており、他の施設などに比べると圧倒的に発生のリスクが高いことを表しています。小さなミスでも人の命を落としかねない食中毒。飲食店を経営していくうえで、食中毒対策は徹底して行わなければいけません。
(2)食中毒の賠償額
万一食中毒を発生させて裁判になった場合、どの程度の賠償を命じられるのでしょうか。飲食店での過去の事例をご紹介します。
- 〇焼肉店でのユッケによる食中毒
- 2011年、焼き肉チェーン店でユッケを食べたお客様約180名が食中毒症状を訴え、5名が死亡する集団食中毒が発生しました。遺族や被害者計9名が約2億円の損害賠償を求めた訴訟は、店側に約1億6千万円の支払いが命じられました。
- 〇割烹料亭でのイシガキダイによる食中毒
- 1999年、割烹料亭でイシガキダイの塩焼きを食べて8名のお客様が食中毒になり、慰謝料など約3,800万円の支払いを求めた訴訟は、店側に約1,200万円の支払いが命じられました。
食中毒を発生させてしまうと、多額の損害賠償が必要となるケースが多く、今後のお店の経営にも影響します。
(3)損害賠償以外のリスク
食中毒は、お客様に損害賠償金を支払う以外に、お店の営業停止などによる大きなダメージを受けます。考えられるリスクは下記の通りです。
- 〇損害賠償以外のリスク
- ・休業による収入の減少
- 食中毒が発生すると、お店は営業停止になる場合があり、その期間の収入はなくなります。場合によっては営業禁止や営業許可の取消なども考えられます。
- ・リコール
- テイクアウト商品で食中毒が発生した場合、購入された他のお客様への被害を防ぐために、商品を全て回収しなくてはいけません。
- ・お店のイメージダウン
- 一度食中毒を発生させると信用を失い、お客様が離れていく可能性が高いです。信用を取り戻すにはかなりの時間を要するでしょう。
HACCP(ハサップ)による効果
2021年6月1日から食品等事業者に義務付けられているHACCPは、徹底した衛生管理で食中毒を防ぐ効果が期待されています。ここでは、食中毒が発生した場合の対応方法やHACCP導入のメリットや効果をご案内します。
(1)食中毒が発生した時の対応
飲食店で食中毒が発生した場合、お客様やご家族のために、迅速かつ的確な対応が必要になります。対応責任者を決め、対応方法を従業員へも徹底しておきましょう。
- 〇お客様から食中毒の連絡を受けた時の対応
- 1.症状や発生時間、お店で食事をされた時間と料理を確認。
- (まだ病院へ行かれていない場合は受診を勧める。)
- 2.保健所に連絡することを伝える。
- (食中毒かどうかや、原因がお店側にあるのかは保健所が判断します。)
- 3.他のお客様からの申し出や、店内で食中毒発生に思い当たる要因があるかを確認し、保健所へ連絡。
保健所の調査の結果、店側の過失による食中毒であると判明した場合、営業停止など食品衛生法の規定に基づいた処分が下されます。場合によっては、この後、賠償などの交渉が必要になります。
食中毒が発生すると、お店は対応に追われ大きな負担となります。このような事態を招かないためにも、HACCPによる対策が必要です。
(2)HACCPとは
HACCP(ハサップ)の考え方は1960年代のアメリカで生まれ、NASA(アメリカ航空宇宙局)が高い安全性を求められる宇宙食用に開発したのがはじまりです。
全ての食品等事業者が、自ら原材料の入荷から製品の出荷までの全工程を管理し、食中毒や異物混入などの危害要因を把握して、その要因を除去又は低減させるために、特に重要な工程を継続的に監視していきます。
- 〇HACCPの導入準備と運用方法
- ・導入前の準備
- 12の手順に沿って危害要因の分析や重要管理点の決定、検証方法の設定などをする必要があります。
- ・運用
- 公益財団法人日本食品衛生協会が作成した手引書に沿って進めていきます(従業員数が50名以下の小規模な一般飲食店の場合)。流れとしては下記の通りです。
- 1.原材料の受け入れ方法や保管方法、清掃や従業員の健康管理などをチェックする「衛生管理計画」を作成
- 2.「衛生管理計画」に沿って実施状況を記録し、保管
より食品の安全を図るため、業務に携わる全従業員に周知させ、お店全体で対応する必要があります。
(3)HACCPによる効果
実際にHACCP(ハサップ)を導入している施設等への厚生労働省の調査によると、HACCP導入のメリットとして、「従業員の衛生管理に対する意識向上」に次いで、「クレームや事故の減少」、「製品に不具合が生じた場合の対応が迅速に行えるようになった」などがあげられました。衛生管理の徹底により、従業員の意識向上や、クレームや事故の減少など、HACCPが食中毒の防止につながっていると言えます。
アプリや保険で備える
HACCP(ハサップ)による衛生管理は食中毒発生の減少に有効的ですが、管理業務の手間や煩わしさを減らすために、簡単にできる方法があります。食中毒が発生した場合に備える対策と併せてご紹介します。
(1)HACCPのアプリで対応
- 〇HACCP導入までの準備
- HACCP導入に必要な衛生管理計画は、アプリで簡単に作成することが可能。業種に合わせたテンプレートを利用して設定するだけで作成できるため、どのように衛生管理計画を立てればよいのかわからない方でも安心です。
- 〇HACCPによる管理
- HACCPによる管理が慣れないうちは、点検や記録の間違いや書類の紛失など、人為的ミスを犯す可能性があります。しかしHACCPのアプリを利用すれば、あらかじめ設定したチェック項目を点検して記録するだけなのでミスをする可能性が減ります。また、紙での管理と違い、紛失する心配もありません。
(2)保険に加入する
どんなに気を付けていても、食中毒の発生を完全に防ぐことはできません。万一発生した場合、先に述べたように、多額の損害賠償の支払いや休業により、大きな損失を被るかもしれません。火災などに備えた店舗保険に加入するのと同様に、食中毒にも保険で備えておくと安心です。
(3)保険の補償内容
食中毒に備えた保険は、被害を受けたお客様への損害賠償金や裁判等にかかった費用に備える補償と、営業停止による収入の減少に備える補償があると安心です。支払われる保険金額は保険会社やプランにより異なり、ほとんどの場合上限があります。保険料や保険期間、詳しい補償内容なども確認し、十分に理解したうえで加入してください。
食品を扱う事業者として、食中毒のリスク対策は欠かせません。
今すぐにできる対策としては、➀HACCP(ハサップ)のアプリを使って簡単にHACCPに沿った衛生管理をすること。➁食中毒が発生してしまったときに備えて保険に加入することです。お客様や従業員を守るためにも、万全の対策で備えていきましょう。
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